「場末のストリップ」    − 博士!これでノーベル賞はいただきです。





東北の名も無い温泉街での事。。。(本当のところ名はあるのだが完全に忘れた)
私は二十代半ばのころ、日本列島縦断50日間の旅に出ていた。
夜更けと共に眠り、夜明けと共に起床する。そんな原始的で健康的な生活を送っていました。
と、言うのも、車で寝るので日が昇ると眩しくて、とても眠れないので朝早く起きてしまうのだ。
当時の私はパチンコ屋が開くまではひたすら国道を南下して行き、パチ屋の開店が近づけば
良さそうな店に入って玉をはじく。というそんな華麗な踊る駄目人間生活でした。

それはさておき、私は風呂だけは毎日入りたい男である。
季節はまだ9月だったが、東北の朝は冷えるので風呂への欲求がより増していた。
ちなみに北海道は寒くてもあまり昼と夜の気温差がないので、東北の方がより寒く感じました。
夕方頃から銭湯を探し始めるが、これがなかなか見つからない。
この頃にはインターネットなどという便利なものは当然なく、カンで探すしか手はなかった。
何しろ街がないので銭湯も無い、それにこの頃はすでに銭湯と言えばスーパー銭湯以外は
軒並みつぶれていた状況。仕方なくわたしは近くの温泉街へ向かった。
すると、あった。ラッキー、日帰り温泉。フロントの店員は言った。「日帰り温泉は1200円です」
高い!ぶっとばすぞ。しかも泊まりじゃないの?的な視線を浴びせやがってこのアイパー野郎!
しかし背に腹は変えられず仕方なく1200円を支払い風呂に入った。
風呂から出ると暇なので散歩してみる。シーズンオフの、ど平日でひとけは全く無い。
この街のメインストリートわずか数百メートル(By浜省)という感じだ。
そしてこの温泉街もご多分にもれず、ストリップ劇場があった。
見ると入場料2000円ポッキリ。安い!温泉の1200円はボッタクリだが、ストリップの2000円は
とてもお安く感じてしまう私。。。。ほんの少し迷った末にに入ることにする。
受付の小太りなオバちゃんに2000円を払い入場。アムロ行きます!
店内は閑散としている。とても汚い。それも掃除がしていないのではなく長年のシミが重なっているようだ。
客はひとり、じじいが一番後ろの座席で寝ているだけ。

私の不安をよそにまるで私の入場を待っていたかのようにショーはすぐに始まった。。。。
まず小太りなオバちゃんが出てきた…って、さっき見た受付のオバちゃんぢゃねーか!
お前、二役か?人件費削減にもほどがあるぞ!受付に戻れ馬鹿者め。そんな私の魂の叫びを無視して
その受付けのオバちゃんは服を脱ぎながらいろいろと話かけてくる。
「どこから来たの?どこに泊まるの?ひとりなの?」
テメーにゃ関係ねーだろう。誰か助けて!起きろ!後ろのじじい!なんてこった。
何で俺は不用意にがぶりつきに座ってしまったのだ?
私の叫びも後ろのじじいに届くことはなく、そして私は無理やりバイブを手渡され、おばちゃんの
デンジャラスゾーンにおもちゃを突っ込まされた…。ここは地獄か?ならば閻魔を出せ!直接ナシをつける。
あーくそっ、早く時間が過ぎてくれ…。
長くも恐ろしい時間が終わった…。良かった。舞台に上げられなくて…。あのじじいじゃきっと駄目だから
生板でもあったら私が指名に預かるのは目に見えている。九死に一生を得た。

よし、次の子に期待だ。どんな舞台にも前座というものがあるものだ。あのドリフだってビートルズの前座で
名を上げたのだ。きっとこのあとビートルズ級とまではいかなくともモンキーズ級くらいの踊り子が出るだろう。
さっきのおばちゃんの熟れ過ぎたザクロのような秘密の花園が目に焼き付いて離れんのだ。
取りあえずその世界びっくり映像だけは消して欲しい。ネクストプリーズ。

でも、可愛い子ちゃん(死語)が出てきて生板なんかあったらどうしよう。僕、ちんこ起つかな…
私はドキドキして待っていた。すると電気が明るくなり、「本日は来館ありがとうございます」のアナウンス。
ええっ!今ので終わりっすか?
納得はいかん、いかんが、どうも場末のストリップは私には敷居が高すぎたようだ。
まあ良い、早く逃げよう。逃げなくては。またしても人生の授業料を払ってしまった。
ドアを開けて出ようとすると、後ろから「ありがとうございやっしゃー」の声が追いかけてきた。
何?僕が思わず振り向くと一番後ろで寝ていたじじぃが笑っていた!おまえ店員かよ?
そして受付にはおばちゃんの姿はなく、ただ(終了)の看板が掛かっていました。
(わたしゃコレドッキリかと思い思わずカメラを探しそうになった)                  (完)



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